
遺言書
遺言書とは?
遺言とは、ご自身の最終の意思(とくに財産の処分)を死後に実現するため、文書として残す意思表示をいいます。
そして、遺言が記載された文書を「遺言書」といいます。
遺言書を作成するメリットとは?
遺言書を作成する最大のメリットは、遺留分の問題は残りますが、財産の分け方を遺言者ご自身の意思で決められる点にあります(被相続人の意思の尊重)。
遺言書に書くべきこととは?
遺言書に何を書くかは原則として遺言者の自由です。
仮に法的効力のないことを書いても、そのことだけで遺言全体が無効になるわけではありません。
一方、次のような事項は遺言でしか実現できないため、遺言書での記載が必須です。
- 法定相続分と異なる割合で相続分を決める(相続分の指定)
- 遺言内容を実現する人を指定する(遺言執行者の指定)
- 遺産の全部または一部を、相続人・相続人以外の者・法人に与える(遺贈)

さらに、相続人の一人から虐待や重大な侮辱を受けたことなどを理由に、相続人の相続資格を失わせる手続(廃除)や認知などは、生前に行うこともできますが、遺言によって行うこともできます。
なお、廃除を遺言で行う場合、手続を進められるのは遺言執行者に限られます。
そのため、廃除を予定する場合は、遺言の中で遺言執行者を指定しておくのが望ましいでしょう。
遺言の方式
遺言の方式は、民法上いくつも定められていますが、一般的には次の2つが中心です。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
①自筆証書遺言
自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言とは、遺言者が手書き(自書)で作成する遺言です。
とても簡単な方法に思えますが、遺言は利害関係人に大きな影響を及ぼし、死後に遺言者の意思を確認できません。
そのため、有効となる要件が法律で厳格に定められており、その要件を欠くと無効になってしまいます。
遺言はいつでも撤回できる
遺言者は、生前であれば、いつでも遺言の撤回をすることができます。
もっとも、遺言者の撤回の意思表示がなされていなくても、一定の事実があったときには、遺言の撤回があったものと扱われます(民法1023条、1024条)。

財産目録以外は手書きの必要がある
自書である以上、ワープロやパソコンで作成した遺言は、自筆証書遺言として認められません。
ただし相続法改正により、財産目録を別紙として添付する場合は、その目録は自筆でなくてもよいことになりました(民法968条2項。2019年1月13日施行)。
したがって、これから自筆証書遺言を作成する場合は、財産目録について、次のものを利用することも可能です。
- パソコンなどで作成した目録
- 預金通帳のコピー
- 登記事項証明書など
ただし、その別紙すべてのページに、遺言者が署名・捺印する必要があります(偽造防止のため)。
また、財産目録以外(本文・日付・氏名など)は手書きが必要です。

自筆証書遺言のメリット・デメリット
遺言書保管制度(2020年7月から開始)
平成30年に、法務局における遺言書の保管等に関する法律(通称「遺言書保管法」)が成立し、遺言書保管制度の利用が可能になりました。
遺言書保管制度とは、遺言者本人が遺言書保管所(法務局)で申請し、法務局が遺言書の原本を保管する制度です。
- 原本が法務局で保管されるため、隠匿・変造・破棄のおそれがなくなる
- 家庭裁判所での検認手続が不要
遺言者が死亡した後は、相続人が、法務局に対し、
- 遺言書の写し(=遺言書情報証明書)の交付請求
- 遺言書の原本を閲覧
を行うことができます。
相続人の1人が証明書交付や閲覧をすると、遺言書保管官(法務局)から他の相続人に対し、遺言書を保管している旨通知されます。
これにより他の相続人も遺言書の存在を知ることができるので、ご自身の遺志を確実に相続人に伝えることができます。
ただし、遺言書保管所(法務局)は、遺言の内容についての相談は受け付けていません。また、遺言の内容が妥当か(争いが起きないかなど)までは審査しません。
ですから後々問題にならないように、遺言の内容については事前に弁護士へ相談することが大切です。
その際に、弁護士を遺言執行者に指定しておけば、相続開始後に遺言内容の実現を進めやすくなりますので安心です。
保管申請は代理人や使者ではできず、遺言者ご本人が法務局に出頭する必要があります。
病気など出頭が難しい事情がある場合は、次の公正証書遺言の作成を検討します。

- 添え手による補助を受けた自筆証書遺言の効力は?
添え手による補助を受けた自筆証書遺言の効力
②公正証書遺言
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証役場において、公証人の面前で遺言者が遺言内容を口頭で述べ、それに基づいて公証人が文章化し、公正証書として作成する遺言です。

公正証書遺言のメリット・デメリット
遺言検索システム
遺言者死亡後は、法定相続人・受遺者・遺言執行者など、相続に法律上の利害関係を有する者が、検索システムにより公正証書遺言の有無を調べることができます。検索は、全国どの公証役場からでも可能です。
ただし、検索で分かるのは、遺言者の氏名・生年月日、公正証書を作成した公証人、作成年月日などに限られ、遺言の内容までは分かりません。
内容確認には、遺言が保管されている公証役場に出向いて手続きが必要です。

不公平な内容の遺言があった場合
遺言書にどのような事項を記載するかは遺言者の自由であり、遺産を「誰に」「どのように」分配するか自由に決められます。
一方、相続人は、それぞれ法律によって定められた相続分(法定相続分)がありますから、相続が発生すれば少なくとも自己の法定相続分に従った遺産を取得できると期待するのが通常です。
そのため、遺言が法定相続分と異なる内容である場合、法定相続分より少ない遺産しか取得できない相続人には不満が残りやすくなります。
このような場合でも、遺言の内容が遺留分を侵害するものであれば、遺留分侵害額請求権(旧「遺留分減殺請求権」)の行使により、一定割合の確保が可能です(原則として法定相続分の2分の1、父母、祖父母など直系尊属は3分の1)。
ただし、被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありませんのでご注意ください。

また、遺言書作成当時、遺言者が認知症などにより、遺言をするための能力(遺言能力)を欠いていたと考えられる場合には、遺言無効確認訴訟により遺言が無効となる可能性もあります。
